或る本の巣、模写。

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タイムマシーン

恋焦がれていたはずの君をみて失望した。なんだ、所詮そんな男と一緒になるのか。

小、中、高と同じ通学路、同じ道を進んでた。誰より俺が近くにいて、俺しか知らない君がいたはず。お互い特別で、俺たちだけの世界があったはず。

大学は君にとっての井戸の外、新しくて眩しい世界だったんだな。俺が古臭く見えただろう。それどころか俺を思い出すこともなかっただろう。SNSで見る君がどんどんと遠い存在になっていった。

それでも成人式で一番最初に綺麗と言ったのは俺、隣の席で笑ってる君を誰よりも可愛いと思っていた。君を好きな自分を感じた。

タイムマシーンがあったならどこに戻ろう。

花粉症のくしゃみをした俺の鼻垂れをみて一瞬笑ったのに「笑ってないよ」と誤魔化した春。ただ一緒にアイスをたべながらスプラトゥーンをした夏。赤いランドセルにイチョウの黄色が映えて眩しかった秋。「冷たい空気で、匂いがしないね」と少ししょぼくれていた冬。

好き、だというにはあまりに好きすぎて伝えられなかった。まだまだもっと、好きになれると思っていたから。

あの日々に戻ってがむしゃらに好きを伝えたい。だからどうか、こんな未練がましい俺を見捨てないでくれ。

1/23/2024, 2:34:38 AM