Open App

お題:形のないもの

 曾祖母は時々遠くを見てる人だった。
「ねぇ、ひぃばあちゃんいつも何を見てるの?」
『ふふ秘密だよ』
曾祖母はかなり高齢だった百歳近くになったはずだ。
 小学校低学年ぐらいだった、私は曾祖母に訪ねたことがあった。
しかし曾祖母はこの質問にだけは答えることはなくいつも曖昧笑っていた。
何となくだが曾祖母は遠く見てる時幸せそうだった。

 そして私が小学校の高学年になった時曾祖母は亡くなった。
ここからは遠くを見つめていた曾祖母が何を見ていたのかを私なりに考えたことだ。

 恐らく曾祖母は亡き曾祖父が近くに来ていたのではないだろうかと思っている。
曾祖母が亡くなる直前に誰かと会話しているのを聞いた。
 私は曾祖母は厳しいけど、優しい人だった印象をその会話を聞くまで持っていた。
でも会話までは邪推なので聞かなかった、しかし曾祖母は恋してるように楽しそうな様子で誰かと会話していた。

 曾祖父は曾祖母より若く亡くなったのは聞いていた。
二人ともおしどり夫婦と呼ばれるほど仲が良かった。

恐らくだが、曽祖父が時々曾祖母に会いに来てたなのかと思う。
遠く見つめていた後の曾祖母は、いつもどこか嬉しそうだった。

私は実際に曾祖父を見ていたわけじゃない。
でもあの2人の仲の良さは目には見えなかったけど、凄く想い合っていたのだろう。

「今頃、極楽浄土で会えたのかな」
お墓に参りながら私は思った。

愛は形のないものだがあの2人のように想い合える人に出会えたらきっと幸せなことだろう。

まぁ私は人生で一度も想い合える人に出会えてないけどね。

9/24/2023, 12:32:57 PM