匿名A

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 雨が降り始めた。
 雨は好きじゃない。でも好き。
 雨に当たると濡れちゃうし、傘も持たなきゃいけないなんて面倒臭い。
 けど、雨の地面に当たると飛び散る、あの音が好き。
 「ぽちゃん」と小さくなるのが好き。
 あと、泣いてもバレない。
 どれだけ泣こうが、どれだけ喚こうが、雨の音で、雨の雫で、バレることなんてない。顔が濡れたと、少し喉が痛いと言えばそれで終わり。
 僕の存在なんて、雨が降っている時はないものと同じようなもんなんだよ。
 それでいい。それがいい、はずなのに。
 誰かに気づかれたい。心配されたい。そんな事を思ってしまう自分がいる。
 そんな自分が気持ち悪くて。憎たらしく思って。
 雨の音で、雨で涙や声なんて消える。それがいいと言ったのは僕なのに。心配されたい?気づかれたい?何をふざけたことを。
 だけど、1度思ってしまえば、そう思う思想はなかなか消えなくて。自分でもなぜだかもうよく分からない。
 雨で佇む僕は、いつだって自分勝手だ。
 こんな僕なんて大っ嫌い。車に轢かれて死ねばいいのに。

 なのに、死ぬ勇気なんてないから。今日も、泣き続ける。
 そして、ずっと奥にしまっておくんだ。

8/28/2024, 4:02:43 AM