月影

Open App

今年も桜の季節が来た。
 君と歩いた道は薄紅色の絨毯が敷かれている。一人で歩くと酷く胸が痛い、行き過ぎる春風、木々に止まった小鳥の囀り、舞い散り落ちる桜の花弁、それから――。
 君の声が耳元で聞こえた気がして、振り向くけれど、余りにも遠すぎて面影さえ見えなかった。
今年も私は君と歩いた道を一人で歩く。遠い君を想いながら。

6/8/2025, 11:00:45 AM