ミヤ

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"そっと"

二人きりで食事をする時、貴女が苦手な食べ物をそっと差し出すようになったのはいつからだったかな。
渡されたお皿を見て、そのままじっと貴女を見つめると、わざとらしく目を逸らされる。それでも視線を外さずにいると、貴女は無言でそうっと僕を拝むんだ。普段は飄々とした貴女が、いかにも後ろめたいですって顔をしてチラチラ此方を窺う姿に、いつも僕の方が先に笑ってしまって負けてしまう。

さりげなくお皿にパスされるプチトマトとか。
いつの間にか僕の方に全部寄せられている鍋の中の春菊とか。
貴女が苦手なものは殆ど野菜だったなぁ。
第三者がいる時は澄ました顔で残さず食べるのにね。
心を許されている証みたいでなんだか擽ったくて、口では好き嫌いは良くないと言いながらも、本当は悪い気がしなかったんだ。


今日も食卓につき、いただきますと手を合わせる。
一人分きっちりの食事が、丁度良い量のはずなのに、なんだか物足りない。

1/14/2025, 3:01:39 PM