奏汰

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閉ざされた日記
誰にも読めない日記帳が学校に隠されている。それは、字が下手すぎて読めないとか、象形文字のような暗号で書かれているとかではなく、罫線以外は真っ白で物理的に読めないらしい。いや、それただ単に新品の日記帳では?と思わず口に出せば目の前にいる宮内は首を緩く振った。彼曰くその日記帳が読めるのは日記帳に認められた人間だけだと言う。

「裸の王様かよ」

僕のツッコミに宮内は一拍、虚を突かれたように目を瞬かせた。

「え、何だよ。その顔」

表情が抜け落ちたと言って差し支えないほどの宮内の真顔具合に僕は思わず身体を引いた。え、何か変なこと言ったか。言ってないよな?
僕の心情を読んだように宮内は「ごめん、ごめん」と手を振っていつもの胡散臭い笑みに戻った。

「君はこういった不可思議な話を聞いてもあまり信じないよね」

「別に信じていないわけじゃないけど、無害なら別に良くない?」

僕は家族関係も成績も運動能力も特出したものは何もない平凡な学生だ。どこぞの勇者じゃあるまいし、日記帳なんぞに選ばれるはずないだろう。

「無害なら、ね」

そうやって意味心な顔しないでほしい。






1/18/2023, 3:46:31 PM