「もうすぐ卒業だなぁ」
高校三年の三学期。なんとか受験も終わり、久しぶりに登校した登校日。彼と二人きりの、放課後の教室。
いろんな想いが籠もっているのか、それとも何も感じていないのか。彼がぽつりとそう呟いた。
「そうだね……」
私はバッグから小さな花束を渡した。
「あげるよ」
青い小さな花。
私の好きな花。
「おー。さすが園芸部。ありがとう」
嬉しそうに受け取ってくれた。
「これ、知ってる。あれだろ、よく外で見る……オオイヌノフグリ!」
全然違い過ぎて笑った。
オオイヌノフグリって、たしかに青くて小さなかわいらしい花だけど。それに対して名前が酷過ぎる花だけど(犬のピ――)。
「違うよ。勿忘草」
「あ、聞いたことある。『私を忘れないで』って花言葉のやつだ。へーこれが」
彼は笑いながら私の頭にぽんと手を置いた。
「安心しろよ。ぜってー忘れねえって」
その言葉に、私も笑顔になった。
……でもね。
勿忘草の花言葉は確かに『私を忘れないで』だけど、青い勿忘草の花言葉は『真実の愛』や『誠の愛』なんだよ。
『勿忘草(わすれなぐさ)』
2/2/2024, 10:39:40 PM