やさしさなんて
君は誰にでも優しい。
その優しさが、僕の胸を締めつける。
吐き気がするほど、苦しい。
お願いだよ。
その優しさは、恋人の僕だけに向けてほしい。
僕には君しかいないんだ。
『僕だけを愛してほしい』
『僕だけを見ていてほしい』
そんな独りよがりな願いが、頭を支配する。
――そうだ、わかった。
『君を閉じ込めてしまえばいいんだ』と。
こんなに簡単なことに、なぜ気づけなかったんだろう。
自分のアイディアに酔いしれながら、君に電話をかける。
『明日、うちに来てほしい。見せたいものがあるんだ』
「―――」
『ありがとう。じゃあ、明日ね』
君が悪いんだ。
僕以外に優しくするから。
君も僕以外なんて、いらないんでしょ?
なら、あいつらに優しさを向ける必要なんてない。
僕だけを見ていて。
8/10/2025, 12:21:51 PM