美佐野

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(二次創作)(最悪)

 最悪だ。起きたら8時だった。6時に起きるつもりだったのに。畑に出たら昨日芽が出ていたはずの作物が全滅していた。今日からインディゴの月であることを忘れていた。垂らしていた釣り糸が途切れて勢いのまま川に落ちた。大きな魚が掛かっていたのに。どうにか自力で這い出したところをセピリアに声を掛けられたまではよかった。彼女の厚意に甘え農場にお邪魔したタイミングで社会の窓が全開であることに気付いた。
 最悪だ、最悪だ、最悪だ。
 僕のドジは今に始まったことではないが、ここまで連続になるのは流石に初めてだ。
「あーはっはっは!アンタ、ホントにドジなんだねええ!」
 挙句、ベスタがもう堪えきれないとばかりに大笑いしている。セピリアは乾いたタオルを渡してくれたがちょっと動きがぎこちない。そしてマッシュ、先ほどから僕をしきりに睨んでくる。恥ずかしいやら申し訳ないやら居た堪れないやらで、僕の感情は先ほどからフル回転だ。
「話には聞いてたけど、どうせホラだろうと話半分だったんだよ。でも今日のアンタを見ると、あながち嘘でもなかったね!」
「それはまあ、僕がどんくさいタイプなのは認めるけ……いやちょっと待って、誰から聞いたんですか」
「ロック」
「やっぱり!」
 僕は天を仰いだ。ロックというのは宿屋の放蕩息子なのだが、一日中遊び歩いているせいか、僕のやらかしに出くわす頻度も高い。まあ、あいつに助けられた場面もあるから大手を振って否定はしないが……だからと言って言いふらすなよドラ息子。
 ベスタが淹れてくれたコーヒーを啜って身体を温める。砂糖とミルクが入っていて、仄かに甘いのが心に優しい気がする。それにしても、どうして今日からインディゴだってのを忘れてたんだろう、僕。季節が変わったら、その季節に合わない作物は枯れるのは牧場主としての常識なのに。
 ああ――最悪だ。

6/7/2024, 6:44:30 AM