死にたい少年と、その相棒

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  /ハッピーエンド

頭がくらくらと回り、軽いようで重たい。不思議な感覚。
下を向けばそのまま頭の重さに耐えきれず項垂れ、上を向けば糸を引かれた人形のようにかくんと天井を向く。
立ち上がればフローリングの床がぐにゃりと歪んで、まるで立っていられない。

ガンッ——と音を立てて床へ倒れ込んだ。頭をぶつけ、目の前を星が散った。
働かなくなってぼんやりと景色を眺めるだけの視界に、唐突に彼が映った。
「また死にぞこなったな。その無駄に頑丈な内臓に感謝しろよ」
「……サイアク」
彼が鼻で笑った。そうして周囲に散らばった錠剤を、床に転がった瓶へ一つずつ戻す。

一瓶飲むだけじゃ、死ねなかった。自殺が失敗するのも、これで何度目だろうか。
「ねぇ、ころしてよ。もう、この際、君に殺されるのでも良い」
「ヤダ」
「……なんで」
「手前が喜ぶから」

視線を動かせばぐにゃぐにゃと視界が波紋を立てた。カラカラに乾いた喉で、そっと笑った。

「ころしたいくらい、ぼくのこときらいなくせに……ぼくがよろこぶから、ころせないの?」
——いい気味だね。
愚かで、無様で、かっこ悪い。

胃の中が異物を押し出そうと蠕動を始める。強まる吐き気に、堪らず言葉を切って、呼吸を整える。
「きみに、ころしてもらえたら……嫌がらせもできて、ぼくはしねて。さいこうの、おわりじゃないか」
「手前にはバッドエンドで十分だ。精々しぶとく生きろ」
彼が、意地悪に笑ったのが分かった。
彼と同じ笑みを返して、吐き捨てた。

「ぼくだって、きみに殺されるのだけは、ごめんだ」

3/29/2023, 10:56:29 AM