シオン

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 ぼーっとした感じで権力者が地面に座っていた。周りにベンチがあるわけではないけれど、地面に座ってると少し不安になってくる。
「権力者」
「…………ん?」
 隣に座りながら話しかけると少しだけぽやぽやしたような顔でこちらを向いた彼女は頭にはてなマークを浮かべている。
「……大丈夫かい? 何か、疲れていたりするのかい」
「……んーん、へーき」
 言葉と裏腹に発言が全部ひらがなのような気がする。ふわふわしすぎじゃないか。
「…………本当に大丈夫かい?」
「ちょっとつかれちゃっただけ」
「疲れてるじゃないか」
「…………え〜?」
 本格的にダメそうだった。
「こんな場所でたそがれてないで家に戻った方がいいんじゃないか」
「いえにいるとばれちゃう。ここならね、わかんないんだ」
 何の話だ、バレるとは。住人に意思なんかないだろう。ほかの場所は他の人が管轄してると言っていたしそういうことか、他の人にバレるってことなのか。
「…………せめて横になれるところにいたらどうだい」
「わかった」
 大きく、大袈裟に頷いたと思ったらこちらに思い切り倒れ込んできた。意図せず膝枕の状態になる。
「……な!?」
「ちょっとだけだからね?」
「なんでそっちが『やってあげてる感』を出してるんだ」
 僕の声に彼女は返事しなかった。目をつぶっているから寝てしまったかもしれないし、正気を取り戻してどうやってここから挽回しようかと思考を巡らせてるのかもしれない。
 まぁ、甘えてくるのは珍しいからと少しの間こうしてあげることにした。

10/2/2024, 12:17:00 AM