もう一つの物語
もう2kgは間違いなく痩せた。絶対。
だってここ一週間まともなご飯を食べてない。
お母さんはもう呆れ返ってる、勝手にしなさいって。
でもこればっかりはしょうがないんだって。
1年前、大事件が起きてしまった。
燦然と自分のタイムラインに踊り込んできた文字列。
『実写版スティック・ストライク〜もう一つの物語〜 ポスタービジュアル解禁 主人公の友人、颯太の隠されたストーリーが今明らかに!』
ヤバい。無理。胃が痛い。
自分の最推しコンテンツの『実写版』
マイ推しメインの『もう一つの物語』
もしSNSが一つの島なら沈没しちゃうんじゃないってくらい界隈は揺れに揺れた。他のアカウントにとってはさざなみ程度なんだろうけど。
自分はふーん実写化するんだ見に行こっかなくらいのテンションだった。映画の中心人物が自推しだってことに数秒遅れて気づくまでは。
スティック・ストライクは元々は児童書、といっても高学年向けの結構分厚めの本。今10冊くらい出てる。結構長寿ジャンル。
小学校ラクロス部舞台のスポーツもの。
子供の頃2巻くらいまで読んで卒業しちゃってた。
それなのに友達に着いてって2年前アニメ映画を観に行ってから全てが始まってしまった。
絶対見て!奢るから!お願いだから着いてきて!って誘われてふーんそんなにってすごく軽い気持ちで入場した。好きなものの話してる友達のことすごく好きだし。
そして見事に落ちた。
颯太君。
いわゆるゴールキーパーポジの彼は主人公の親友でいつも穏やかで頼れる奴、なんだけど親の都合で一瞬転校しちゃう。
新ゴールキーパーポジ決まらない限り練習試合もできない!大ピンチ!っていうエピソード。
主人公が代わりにゴールキーパーをやりますって名乗りを上げるんだけど挫折、って展開させないのが颯太君。そうなるだろうなって分かってる颯太君はゴールキーパーの極意をちゃんとノートにまとめてて。どこまでも頼りになるなって。
つまり最高エピソードなんだよね!最後には戻って来てくれるし。
エンドロールの余韻に浸りながら絶対推す…って泣きながら誓った。最高。愛。
そして実写版はこのアナザーストーリー、シナリオ完全新規らしい。
嘘でしょ。
深呼吸して公式アカウントを薄目でもう一度確認する。
主演のビジュアル、推しのこと、最高。私でも知ってる俳優さん。演技力も最高。特報映像見ました?1000回は再生しちゃったかも。
映画のあらすじをチェック。
高校ラクロス部でゴールキーパーとして活躍する〜、ストップ。高校生?
OK、実写版で年齢が+されるのはよくある話、と聞く。タイムラインのお姉さんが言ってた。大丈夫。高校生の颯太君も最高だもんね、同い年になっちゃった。不思議。
映画情報サイトの記事もチェック。
ヒロインは今年大ブレイク中の〜、ストップ。
ストップ。待って。思考停止。ダメかも。
転校中の話って本当に無から出てきた話であって、耐衝撃吸収装置も何もついてない。
お願い脚本家の人、私生きて映画館出られるでしょうか。
誰も知らない裏で颯太君はどうしてどうなっちゃうの本当に。
でも映画が大ブレイクしたら世界に颯太君が届く。バランスは取れてる。
公開映画館うちの県に一個しかないけど。公開当日金曜日レイトショー見に2時間かけて移動ですけど。
ありがとうお父さん。今日もありがとうって言おうと思う。お母さんも心配させてごめんって。
ずびっと鼻をすする。
情緒ずっとめちゃくちゃ。今日水曜日、明後日公開日。
公式もSNSも正直チェック出来てない。そういや最新情報見てなかったなって上の方に遡る。
《入場特典:原作者書き下ろし小説!チームメンバーの日常ミニストーリーを週替わりでお届け》
呼吸止まるてこんなん。
ありがたすぎ、感謝しかない。
でもさすがにこんな直前に開示しなくても流石に良くない?
とりあえず私をはめた友達にメッセを送る。書き下ろし小説絶対欲しくない?!って。
テンションの乱高下がすごい。もうめちゃくちゃ。
だめ。今日もゼリーしか喉を通らないかも。
10/29/2024, 11:45:52 AM