考える葦になりたい鳥

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海の底

海の底で物言わぬ貝になりたい。
これはいつも想うことだ。

思ったことを口にしてしまうことで、何人もの人、その人の大事なものまで傷付けてしまった。
その度に「海の底で物言わぬ貝になりたい」と想うのだ。

海の底は暗いかもしれない。でも、見上げれば光の差す水面が見えるかもしれない。光を反射する魚達は、さぞ綺麗だろうな…。

最近は、言葉の遣い方を間違えて、誰かを傷付けるくらいなら、話さないほうがいい。話して、誰かを怒らせて、自分の中の何かが壊れる音を聴くのは苦しい。
そう想って、話すのを控えて生活するようになった。大事な人との衝突は減ったが、会話と言えるような会話もなくなるようになった。

ある時限界が来て、ひとり、子供のように泣いた。

泣いても何も変わらなかった。変えようと想えなかったからかもしれない。ありのままの自分は誰にも受け入れられないことを知っていたからだ。

それから、自分は、ハシビロコウみたいに一点を見つめて、心の中は歌うように囀るカナリアになった。

いつまでも、この静かな鳥かごを飛び回る、人間になれない可哀想な鳥。

まだ、翼は折れていないから、海の底へは行けないけど。いつか、行ってみたいな。
深い深い海の底へ。


1/20/2023, 12:44:58 PM