49好き嫌い
「お父さん、僕ね、アルティメットワイルドスティンガーと、絶竜孤斬剣で迷ってるんだよ……」
「うん? なんて?」
「だから、アルティメットワイルドスティンガーと、絶竜孤斬剣。どっちも好きだから、選べないの」
小学三年生の息子が、一枚の封筒を見せてきた。
学校で今年から使う、書道セットの注文のお知らせである。
私が子供だった頃は、せいぜいパステルカラーとモノトーンの二択、と言う感じだったが、最近は10や20もある中から選べるようになっている。多様性の時代だ。単純に華やかでもあるし、いいものだと思う。
「どっちもかっこよくて、選べないんだ…」
新旧のキャラもの、なじみ深いお菓子のパッケージ、無地からグラフィックアート風、少女向けのキラキラ風。
そして、少年向けのドラゴンと剣。ご丁寧に、西洋風の騎士と和風のサムライと2パターンが用意されている。
西洋風がアルティメットワイルドスティンガーで、和風が絶竜孤斬剣。
「究極の選択だな…」
「うん……」
親子で頭を抱える。多様性の時代には選択肢がたくさんある。好きなものがたくさんある。一つを選ぶのも、それはそれでなかなか大変なのだった。
6/13/2023, 8:37:35 AM