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愛を注いで。
カクテルグラスはロングで。
カシスウーロンの、青から茶へのグラデーション。
陽一は、このバーでマスターをやって、六年になる。カクテルをステアするシルエットは、シャンデリアの明かりに照らされて浮かび上がる。黒と白のハイライトは、コルク栓の赤茶けたワインボトルに投影されて、喧騒的に光っている。
キールは、ワインとトニックウォーターをステアしたカクテルで、ピンク色に光るグラスの底が愛らしい。女性に受けるカクテルだ。
愛してると言う時、カクテルがあれば、どんなに幸せだろう。
別れを切り出す時、カクテルがあれば、どんなに円滑に話が進むだろう。
酒の力は偉大だ。
今日もカップルがやって来て、二人ともソルティドッグで、と言うので陽一は、グラスの端に薄く塩を付けた。ウォッカをベースにグレープフルーツジュースで割った酒は、度数は強いが根強い人気がある。
それは、この日の疲れを癒しにやって来る、人々の潤いである。

12/13/2023, 10:16:09 AM