雨の音は、ずっと続いていた。
止むことを忘れたように、静かに、冷たく。
私は、傘を持たずに外へ出た。
理由なんてなかった。ただ、濡れたかった。
足元には水たまり、
その奥には知らないわたしの顔。
目を合わせると、
すぐに揺れて壊れてしまった。
空が少しずつ薄くなって、
遠くに色が差し込んだとき
私は忘れていた願いを思い出す。
虹の、いちばん手前を探してみたかった。
どこにも繋がらない曲線の、始まりを。
誰も触れたことのない、端っこを。
濡れた道に靴音を落としながら
向かうあてもないのに、ただ歩いた。
誰かの笑い声を横切って
止まった信号に、意味もなく背を向けて。
でも
あの七色は、追えば追うほど逃げていく。
まるで
いつかの私みたいだった。
それでも、探すの。
なぜって、あの色に手が届いたら、
きっともう一度だけ
私は、わたしを信じられる気がしたから。
虹のはじまりなんて、
最初からなかったのかもしれない。
だけど、探したことだけは、
嘘じゃなかった。
7/28/2025, 11:16:15 AM