「海の底」
此処は何処?
何も見えない、聞こえない。
ただひたすら、苦しくて、暗くて、寒い。
最後の記憶は、貴方との夕食だった。
楽しくご飯を食べて、ワインを飲んで。
やだ、私ったら、飲み過ぎたの?
何だかいつもより酔いが回るな、とは思ってたの。
人前でこんな、記憶を失う程酔うなんて、恥ずかしい。
まして、貴方の前だなんて、どうしよう?
……少しずつ思い出してきたよ。
飲み過ぎて、気持ち悪くなって、貴方の部屋で横になってた。
私を心配した貴方は、私の親友の彼女を呼んで、介抱してもらって、私を家まで送り届けようとしてくれたんだよね?
彼女と2人で私を抱きかかえて、私のカバンも靴もちゃんと持ってくれたね。
そして、私の家まで帰る途中で、少し気分転換に海に来たんだよね。
外の空気を吸うと楽になるかもって。
そこからが又少し記憶が曖昧なの。
彼女と、貴方と、私で、何か言い合った気もするし、楽しく笑い合った気もする。
……息苦しい。何なの?
此処は何処なの?
何でこんなに冷たいの?
そして、完全に覚醒した私は思い出した。
貴方と彼女は、お金目当てで私を殺そうとしたんだよね?
貴方は、元々それが目的で私と一緒になったんだよね?
そして、2人で私を海の底に……
そして、私は気づいた。
だから、いつも護身用に持ってたナイフで2人を……
冷たいのは、2人を海に沈めたから。
私もそれで濡れてるから。
苦しいのは、貴方も彼女も両方を一度に失ったから。
暗いのは、先行きが不安だから。
でも、大丈夫。
貴方と彼女の計画に気づいたその時から、私もちゃんと考えてた。計画してた。
上手く2人を葬れるように。
そして、それか発覚しない様に、万全の注意を払って、準備してた。
きっと見つからない。
きっと、このまま上手くいく。
きっと、大丈夫。
だってもう2人は海の底。
私を脅かす人は、もう居ないから。
1/20/2026, 1:10:17 PM