『花束』
花が咲くように笑う君が好きだ。
だから、君がいないこの部屋はなんだか殺風景で淋しくて悲しい……。
通りすがりの花屋で初めて花を買った。
チューリップのように鮮やかに笑う君。向日葵のようにおおらかに笑う君。
薔薇のように麗しく、秋桜のように可憐で、カスミ草のように儚く笑う君がまぶたの奥で鮮明に蘇る。
たくさんの種類の花を一輪づつ選ぶ僕の姿は、店員から見たら節操がないよう見えるかもしれない。
でも一種類には絞れない。
気がついたら、両腕で抱えるほどの大きな花束を持って帰っていた。
小分けにして、家のあちこちに飾ろう。
花が咲くように笑う君の揺れる残像が、まだ僕の目には見えている気がするから。
2/9/2023, 10:35:12 AM