鶴上修樹

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『あなたとわたし』

 あなたと私は、双子。髪型、服装、好きなもの、何でも同じ。あなたと私は、ずっと一緒なの。
「あれ? あの人、さっき通った気がするんだけど」
「えっ、もしかして、双子とか? やだぁ、そっくり!」
「そっくりどころじゃないよ。コピーでしょ、あれは」
 通る人達が、私を見てコソコソ話。という事は、あの子はここを通ったのね。つまり、今いる場所は――。
「……えっ? 家で待っててって言ったのに」
 私の前に現れたのは、穏やかそうな黒髪の若い男性。私を見て、目を丸くしている。
「あら、ごめんなさい。ちょっと用事を思い出しちゃって。すぐに終わると思って出てきちゃったの」
「用事? 用事って、何の?」
「……知りたい?」
 私が腰をくねらせながら聞くと、男性は喉をごくりと鳴らし、私の腰を優しく抱えてきた。
「……用事、もうどうでもいいわ。それよりも、あなたと一緒にいたい」
 私はそう言って男性の腕を引き、ホテルまで引っ張っていった。驚く男性に、「我慢ができないの」と、私は吐息混じりで話すのだった。

「……いい加減にしてよ」
 ――あら、何が?
「とぼけないで。また私の彼氏を誘惑したでしょ! いつまで経っても帰ってこないから連絡したら、もう君とは付き合えないって、一言。あんたの仕業でしょ!」
 ――あんな彼氏、あなたに必要ないわ。
「勝手に決めないでよ! あと少しで、彼と良いムードになれるってとこだったのに……! 双子の【片割れのフリ】をして人の彼氏を誘惑して食って、楽しいの?」
 ――食ってないわ。
「はぁ?」
 ――あなたの今までの彼氏達、私の身体を見ると、すぐに逃げ出すのよ。まぁ、さすがに【身体は同じじゃない】から、仕方ないんだけどね。
「ちょっと、何を言って……」
 ――『まだ』、なんでしょう? よかった。あなたを狙うチャンス、ずっと探してたの。あなたから「家に来なさい」って連絡が来て、すっごく嬉しかったんだから。
「いや、何するの……やめて……!」
 ――ふふふ、大丈夫よ。何も怖くないわ。これであなたと私は、一つになるの。さぁ、繋がりましょ?
「い、いやぁ……! 誰か、助け、て……!」

 あなたと私は、双子。【凹凸】を合わせた、シアワセの双子なのよ。

11/8/2024, 12:28:42 AM