先ほどまでの吹雪が嘘のように、降り積もった雪は静寂を湛えていた。
彼を失った日も、こんな日だった。
「別れたい」と言う彼に、私は「わかった」と答えた。
外はひどく静かで、その静けさが声に移っただけだった。
あの時、縋り付いて嫌だと泣いていたら今とは違う未来があったのだろうか。今でも私はあなたの隣にいたのだろうか。
でも、私はそんなことできない。できるはずがないのだ。可愛くない女。
だから、あなたに全力で縋り付き、「あの人と別れて私を選んで」と泣いて頼めるその人を、少しだけ羨ましく思ってしまった。
もし私が男なら、「わかった」と声色も変えず静かに告げる女より、自分に縋り付き「捨てないで」と泣く女を可愛いと思ってしまうだろう。
でも、二人が別れたと聞いて、「やっぱり」と思ってしまうのだ。
静けさを湛える白い世界を見つめながら、私はふふっと笑ってしまった。
12/17/2025, 5:24:06 PM