また来ますね。
「はぁ…」
春が来るのは憂鬱だ。
人が苦手な俺からすれば、新学期とかクラス替えとか、もう地獄のイベントに過ぎない。
そう思いながら、放課後に誰も居ない教室の席に座って、窓の外をボーっと眺めていた。
「どうしたんですか?ため息吐いちゃって。」
音も立てずに、部活の後輩が教室に入ってきた。
「…いや、何でもないよ。てか何で来たんだ?」
後輩はいつも通りニコニコしながら、俺の前の席に座って、
椅子をまたいで、後ろにいる俺に身体を向けた。
「いやー、先輩居るかなって、笑」
後輩は照れくさそうな顔をしてそう言った。
「…」
無言の空気が流れる。
そんな中で、後輩くんは寂しそうな声で呟いた。
「先輩は、…俺に来てほしくなかったですか、?」
「………いや、別に。…何か、俺さ。
いつも1人だからさ、この時間がずっと続けば良いなぁ…、なんて…いや今のは忘れてくれ。」
今思えば、後輩は俺と違って友達だって多い。
なのに、毎日こうやって放課後に来てくれて、今日あった事とかを楽しそうに話してくれる。
俺はこの時間だけが好きだった。
「…そうっすか、先輩にそう言ってもらえると嬉しいです。また来ますね!」
後輩は少し顔を赤くしながら、教室を出ていった。
俺は1人ポツンとなった教室でまた、
明日が来るのかと、憂鬱になりながらも、少しだけ楽しみになっていた。
4/8/2024, 11:17:23 AM