星乃威月

Open App

『今週は、多忙だったからな……
 たまには、ご褒美として、奮発もいいかな』


外に出れば、暖かな風が肌を擦る

街を歩めば、ザワザワと聞こえてくる音が、なんだか心地良い

祝日の賑わいの中、昼間の喫茶店は、様々な客層で大にぎわいだ

おもむろに店内へ

◇─◇─◇

コーヒーの温かな香りが鼻を掠め、ウツラウツラと目が霞む

順番が来て、目当ての品を注文した


「お持ち帰りですか?」

「いえ、店内で」

「空いてるお席へ、どーぞ」


店員の優しい心遣いは、注文を終えたばかりで緊張した心を、ホッと和らげてくれる

案内され、誘導されるがままに進む

どこもかしこも、人で混雑していた

本当に席は空いているのだろうか?

◇─◇─◇


「こちらへ、どーぞ」


やっと空いてる席を見つけた

こんなに混雑している中、親切に誘導してくれる店員には、感謝の気持ちでいっぱいになる


「有難う」

「いえいえ、どういたしまして」


その一言に、安心感が広がる

まるで、暖かな毛布に包まれたような心地よさを感じられた

店員は、ニコッと微笑み返す

この瞬間、心がほっこりした


「あなたの心優しさに、胸を打たれました
 本当に有難う」


感謝を述べると、店員は再びニコッと微笑みを返した


「いえいえ
 では、ごゆっくり」


店員はペコリと頭を下げると、忙しそうに去っていった

◇─◇─◇

通された席は、個室になっていた

ゆっくりと席に近づく

腰を据え、おもむろに商品を口にした

今日はホワイトモカ

香ばしくほろ苦い味わいに、この引き立つ甘さが、疲れた体に染み渡る


「はぁ~」


この瞬間が、なんとも堪らない


お気に入りのホワイトモカを片手に、窓から写る山々の景色を堪能する

青々とした山々が、光を受けてキラキラと輝き、その奥には静かな湖が広がってる様子が目に映る

薄雲を背にして静かに佇み、光が当たって色とりどりに輝いていた

この忙しい日常の中で、こうした瞬間がどれだけ重要か……


今日は晴天

午後もひときわ暑くなりそうだ

蝉の声が微かに聞こえ、夏の訪れを懐かしいメロディのように響いている

座席の温もりが、まるで夢の中へと誘われるかのようだ


『あぁ、これが、夢見心地という物か
 徐々に身体が軽くなり、心地よい風が頬を撫で、まるで空に浮いてるかのような感覚に、心が満たされてゆく
 この瞬間が、永遠に続けばいいのに……』


◇─◇─◇

周りの喧騒が徐々に遠ざかり、静寂が次第に包み込む

現実世界が薄れてきて、まるで夢の中にいるかような感覚が広がった

暫しの間、夢の中に誘われた

夢の世界には、まるで自分だけの時空のように、時が静かに流れてく感覚が漂っている

ゆっくりと時が流れるかのように、心がスッと解放されていった

◇─◇─◇

次の週末を思い描くと、心が踊り、嬉しさが込み上げてきて、体中が幸せに満たされる

その時、胸が高鳴り、顔に自然と笑みがこぼれた


『今度は、家族を連れて来よう
 ここから見える青々とした山々の眺めの良さと、香ばしい香りのするコーヒーの旨さに、きっと、嬉しがるはず!
 きっと、大喜びするぞ!
 その笑顔を思い浮かべるだけで、既にワクワクが止まらない!
 想像するだけで、次の週末が、まるで夢のように待ち遠しいな……』




ー真昼の夢ー

7/17/2025, 9:42:49 AM