永身未来

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今日も、眠れない。カチ、カチと一定のリズムで時間を測る時計。静止するベランダのカーテン。真っ暗な部屋。その寂しい部屋の中央に、ダブルベッドがポツリとあり、その横にサイドテーブルがある。サイドテーブルの上には、スマホと、小さく、アンティークなテーブルランプと、二冊ほど、分厚い本が積まれていた。そのすぐ横、ベットの上に仰向けで寝転んでいるのが私。治っていうの。私は夜、なかなか寝付けない。日が昇るまで寝付けないこともザラにあった。暗闇に目が慣れてしまって、天井の皺まで数えられてしまう。暇だ。暇なせいで、私は普段、横にいるはずの彼のことを思い出す。可愛くて、格好つけな彼のことを。
『中也ってば、遅いなぁ。残業にも程があるでしょ。』
中也っていうのは、私がさっきから言ってる"彼"のこと。中也は今日、残業している。残業といっても、すでに時刻は日を跨いでおり、中也の勤めている企業がいかにブラックなのかがわかる。私はスマホをサイドテーブルからとり、中也にメッセージを送る。
'いつ帰ってくるの?'
既読は、案外早く着いた。
'すまん。あともうちょっとで仕事終わるから、先に寝とけ。'
そんな、短い会話を文面で終わらせ、私は天井の皺を数え出す。少し、寂しさが紛れただろうか。そんなことを考えながら、天井の皺を数える。
それから数時間後、ベランダから物音がした。中也だ。この、朝方四時とかいう微妙な時間にベランダから家に入ってくるのは中也しかいない。私は少し嬉しくなり、駆け足気味にベランダの窓に向かう。朝四時まで一睡もできなかったからか、フラフラするが、そんなのは関係なかった。カーテンを勢いよく開ける。空はまだまだ暗かった。ベランダにはやはり中也がおり、目を見開いて驚いていた。私はそんな中也を無視して、ベランダの窓を開ける。夜風が冷たく、部屋の空気が一気に下がる。中也を部屋に入れ、ベランダの窓をしめる。改めて見ると、中也の鼻や手先が赤かった。私は中也の手を握り、頬に当てた。氷のように冷たかったが、いつも頭を撫でてくれる、優しい手。先ほどまでパソコンのキーボードと浮気をしていた手。私はその手に頬を撫でられ、一気に眠気が襲ってきた。まだ中也の顔を見たいのに、瞼が言うことを聞かない。

「うおっ!?」
太宰が、俺の手を頬に当てたと思ったら、急に倒れた。咄嗟に抱えることができたので怪我をさせることはなかったが、太宰の顔に傷でもできたら一生の後悔になるところだった。驚きで早くなった鼓動が少し痛い。俺は太宰を抱えてベットに寝かせる。寂しかったのだろうか。気持ちよさそうに寝る太宰の目の下には、うっすらと、隈があった。きっと、一睡もできなかったのだろう。俺は、仕事着のまま、太宰の隣に寝転んだ。太宰に抱きつくようにして、俺も、目をつむった。

12/15/2025, 1:42:32 PM