よつば666

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お題『手ぶくろ』

 父方の祖母に家に引っ越しして間もない頃、赤い紐付きのミトン型の手ぶくろをつけて、雪が積もったある日、まだ名前も知らない近所の子供達と公園で大きな雪だるまを作った。

雪だるまの上部(顔の部分)には落ちている葉っぱや小石、細い木の枝をつけた。下部(胴体部分)の左右に中ぐらいの木の枝を上からさした。中心部分には上部と同じく葉っぱや小石で飾っていく。完成間近の雪だるまを見て子供達は悩んでいた。

 『雪だるまに手ぶくろをつけてあげたい』

だけど自分達が着けている手ぶくろを雪だるまにつけるはなんだか気が進まないようだ。すると一人の少女が––––。

少女「この手ぶくろをつけてあげるよ」

少女は自分のつけていた赤い紐付きのミトン型の手ぶくろを外しそっと雪だるまにつけてあげた。
すると近所の子供達は口々に「かんせいだ〜〜!!」っと喜んでいた。
もちろん手ぶくろを雪だるまにつけた少女も喜んでいる。
公園の中に設置してある太陽電池電波時計(時計塔)から夕方を知らせるメロディーが流れると少女を除いた近所の子供達は各家へと帰って行く。
しばらくしてメロディーが鳴り終えると一人の老婆が公園にやって来た。

老婆「可崘(かろん)ちゃん、ご飯だよ」

名前を呼ばれた少女はその老婆の元へ駆け寄り手を繋いで家に帰る。帰り道老婆は孫に問うた。

老婆「手ぶくろどうしたの?」

可崘「雪だるまにあげたの」

老婆「そうかい。可崘ちゃんは優しいねぇ」

後日その老婆は可崘に新しい毛糸で作った白い雪だるまの絵が入ったミトン型の手ぶくろをプレゼントしたのでした。

End

12/28/2024, 4:11:05 AM