夜空の音

Open App

本気の恋

声が詰まった。
君と話したいことは沢山あって、伝えたい言葉も沢山ある。
君と話したいことを沢山考えて、伝えたい言葉も沢山考えた。
だが、声にならない。
溢れるのは音ではなく、雫だった。

「....っ。」

何度も息を吸って、何度も口を開くが、変わらない。
これほど、マスクをつけていて良かったと思った日は来ないだろう。
開いた口を隠し、雫は食べてくれる。

君の顔が見れない。
見たら逃げてしまいそうだ。
でも、わかる。
君は、私の言葉を待ってくれている。
何も言わず、何もせず、どこにも行かず、ただ私の前に立っている。

情けない。
そんな自分を奮い立たせるため、大きく息を吸って、君の目を見た。
「っ....大好きです。」
マスクが食べきれない大粒の雫が生まれた。
視界は歪み、キラキラしている。首につーっと冷たいものが滑っている。
情けない。
沢山考えた。沢山想像した。
でも、出てきた言葉は、想像していなかった、何ともシンプルで短い言葉だった。

だが、これが正解だ。
どれだけ取り繕っても、この言葉が心の最深部を巣食っている。

君は、口を開いた。
わかっている、でも、聞きたくないっ。


ピピ、ピピ
目覚ましがなる。
女の子はアラームを止め、身体を起こす。彼女は頬に冷たい線を感じた。
「....夢か。」
カーテンを開け、急いで顔を洗い、目元を冷やす。身支度を整え、家を出る。
外へ1歩踏み出せば、あの日と同じ、澄んだ空が彼女を見下ろしている。

今、何してますか。
どこにいますか。
誰といますか。
どんな女の子が君の心にいるのかな。

毎日、同じ質問が彼女の心をよぎる。
その度、胸が苦しくなる。いっそ、記憶が消えたらいいのにと思う程に。
でも、これでいいのだと思う。
目を閉じると、あの向日葵のような笑顔が瞼の裏で映された。
彼女の心が太陽に照らされたように暖かくなる。

大きく息を吸って、澄んだ空を仰ぐ今の彼女は口元が光に照らされている。
太陽に向かって小さく微笑んだ。
「今日も向日葵、咲かしてるかな。」

9/12/2024, 11:28:13 AM