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 なんだか、空がどんよりと重たい気がして。
 急いで軒下に駆け寄ると、瞬間、ザアッと雨が降り始めた。
(ああ、駆け込んでよかった……)
 腹のほうで抱えていたリュックサックを抱きしめる。
 ここには大切な資料が入ってるし、傘も持ってなかったから、すぐ近くに軒があったのはほんとうにラッキーだ。もしかしたら今週の運をすべて使ってしまったのかもしれない。まあそれでも悔いはないけれど……。
 一頻りくすくすと笑って、ふう、と息を吐く。
 もう雨は止んでいた。
 そういえば、通り雨ってなんであんなにも勢いがいいのだろうか。
 ぼんやりとそんなことを考えて、ふと考える。
 さて、この雨が止んだらどこに行こうか。
 家に帰ろうと思っていたけど、それよりもやりたいことが出来たから。
 私は今日、晴れた空の青色以外にも、焼く前のうすっぺらいピザ生地みたいな雲や、それらが落とす、透明な涙があることを知ってしまった。
 そうしたら、もう屋内でおとなしくしていられない。
 私は、自分で言うのもなんだけど、知的好奇心は強い方なのだ。
「よぅし、今日は探検だ~!」
 ひとり拳を空に突き上げた。
 空はすでに朱く染まりつつある。
 


▶通り雨 #18

9/27/2023, 2:31:06 PM