前回投稿分の、その先に続くおはなし。
「ここ」ではない別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこは、たとえば世界間の渡航用一般航路を開通したり規制したり、あるいは閉鎖したり、
侵略されそうな世界を守ったり、逆に侵略しそうな世界を監視したり、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムが、他の世界に悪さをしないように収集・保管したり。
要するに、世界のために、色々やっておりました。
今回のお題を回収できるチートアイテム、「空繋ぎの水たまり」も、管理局の収蔵品。
元々はドチャクソにデカい水たまりであったのが、
水たまりを保有していた世界がその水たまりのせいで隣の世界も巻き込んで滅んでしまいまして、
結果、ちょっとだけ残った文字通りの「みずたまり」だけが、残って管理局に収蔵されました。
小ちゃい分には、何も、悪さをしないのです。
ただ独自の魔導プログラムによって設定された別の世界、設定された座標の空と、
水たまりを、繋ぐだけなのです。
水たまりに映る空は水たまりの上の鏡像ではなく、
すなわち、「空繋ぎの水たまり」と繋がった、別の世界、別の座標、別の空。
何が困るって、ただの水たまりだと思って「空繋ぎの水たまり」を踏んづけると、
スポン! 繋がっている空に落っこちるのです。
あら大変。 まぁ大惨事。
で、ここからがお題回収と前回投稿分への接続。
そうです。世界線管理局の1名、やらかします。
妙な理由でこの「空繋ぎの水たまり」、管理局内の難民シェルターに落っこちておりまして。
「久しぶりの晴れ間だ」
難民シェルターというのは、故郷の世界が滅んでしまった異世界人を、住まわせるための空間。
規格外の大きさに、空も太陽も雨も季節も、全部、ぜーんぶ、あるのです。
「なにも日本と同じ時期に、シェルター側の季節まで雨季に設定しなくてもさ……」
今回「空繋ぎの水たまり」にドボンするのは、
「こっち」の世界の東京、奥多摩出身、ひょんなことから管理局に入局した通称「奥多摩君」。
ちゃんとビジネスネームも貸与されていますが、
皆みんな、「奥多摩君」と呼んでおるのです。
その日、奥多摩君は難民シェルターの、美しい本物の植物園の中で、気分転換に散歩中。
シェルター世界は人工ですが、そこに植えられている植物、生きている動物、悪さをしている宇宙蚊や雷々虫は、命ある本物なのです。
「おっ。水たまり」
いつもなら家族連れや散歩中の宇宙タコ、花を愛でたい花の妖精竜人なんかがチラホラおる植物園。
今日は諸事情で、奥多摩君の貸し切りです。
「懐かしいな。ガキの頃、飛び越えたり、わざと水たまりに入ったりしてた」
その諸事情こそ「空繋ぎの水たまり」。
『敵対組織によるテロ行為により、収蔵品「空繋ぎの水たまり」が落ちています。
ただちに退園し、避難してください。』
奥多摩君にはお題を回収してもらいますので、
緊急放送を「偶然」シャットアウトしましょう。
「キレイだよなぁ」
植物園で「空繋ぎの水たまり」を見下ろしておった奥多摩君が、言いました。
水たまりに映る空は、別の世界、別の空。
難民シェルターの空ではありません。
奥多摩君はそれに気付かない!
「おりゃ」
そのまま、ジャンプして、水しぶきを散らそうと水たまりに、着地
「おお!?おわぁぁぁ?!?!?」
できない! だって、水たまりは「空」に繋がっておるのですから!
「ちょ!え!?深いぞ!なんだこの水たまり!」
その水たまりが「空繋ぎの水たまり」です。
その水たまりが、お題回収なのです。
「あれぇ。奥多摩君だぁ」
水たまりが繋がった先は、ちょうど、前回投稿分の舞台であるところの都内某所、某アパート。
「なにしてるのぉ?奥多摩君の分のきりたんぽ、もう、無いから食べられないよぉ?」
アパートのベランダに落っこちた奥多摩君を見ておったのは、以前同じ部署に居た、ビジネスネーム「ドワーフホト」のお嬢さん。
「くぅぅ、背中、うった……!」
何がなんだか分からない奥多摩君は、ひとまず奇跡的に同僚に発見されましたので、
その同僚のおかげで、職場に帰ることができましたとさ。 おしまい、おしまい。
6/6/2025, 4:20:08 AM