見つめられると
君が私を見る。
その瞳は少し潤んで見えた。
犬みたいだ。そう思った。
「また、遊んであげるから。」
小さな子どもを宥めるように、そう言い聞かせた。
君は、うん....と言いながら、手を伸ばす。
その手は私の手に重ねられ、スリスリとさすられる。
君は、いつも汚い手だと、荒れた手を嫌う。
だから私は上から手を重ねて、いつものように口にする。
「お仕事頑張ってるお手てだね。」
そんなことない。と言いながら、君は少し口角を上げる。
君は私の手を握り直して、車の肘置きに腕を立てる。
そして、私の頬に指を添えて、猫にするように頬を撫でる。
私はそれに、無意識に目を閉じて身を委ねてしまう。
今までの恋人にも言われてきた。きっと私は猫のような女なのだと思う。
君が満足するまで車に居ようと思う。この手が離れたら、車から降りようと。
しばらく撫でられ続け、その間君は私の顔をずっと見ていた。
「仕事終わり被ったらまたご飯に行こ。仕事じゃなくても、言ってくれたらご飯に行くから、ね?」
君はパッと明るい顔をして、身体を引く。
そして、手は離れた。
「ほんまに?」
「ほんと、約束ね。」
犬のしっぽがパタパタと振られてるのを見てる気分になる。
「....それじゃ、帰るね。手が離れたら帰ろうと思ってたの。」
私はそう切り出した。
また、捨て犬のような目で私を見る。
そんな目で、見ないで欲しい。
私たちは元恋人であって、今は恋人じゃない。
友人に見せる顔をしていて欲しい。
私たちは、“友達”なんだから。
3/28/2026, 12:04:36 PM