no.10:時間よ止まれ
「時計が遅れはじめても、大事な日には遅刻できない。そんなわけであたしの時計、今から10時で止めておくね。未来で待ってるよ!サトル」
ふざけているとしか言いようがない。
チカの時間は、僕の部屋の時計の先を行っている。
世界の針がチカに追いつくまであと40分と少し。
「時間の隙間に潜り込んではいけない?そんな決まりあった?いつから?こんな風に質問攻めしてると小学生みたい。懐かしいよね」
ベッドの中から電話していると自称するチカの声は、妙に溌剌としている。
また少し泣いたんだな。
チカはどうせ、鼻を啜る音を立てないように気をつけながら話している。
スマホを通じて、僕に余計な心配をかけさせまいと、意地になっているのだ。たぶん。
わかってないなチカ。君に迷惑かけられても、僕は全然嫌じゃないのに。
2/16/2025, 10:44:29 AM