街へ
いつもより早起きして、午前中にやるべきことを済ましておく。
クローゼットの少し奥の方に置いたワンピースを取り出して、鏡の前であてて見る。
淡い色合いで、その色によく合う柔らかい素材は肌触りがよくて、思わず一目惚れして買ったものだった。
控えめだけど、丁寧なレースがあしらわれていて、とても自分好みだった。きちんと手入れしていたため、悪くなっているところはどこもない。
うん、と頷いて、決まった服装にテンションが上がる。
実際に着てみれば、ふわっと広がる裾が可愛らしくて、自然と笑みがこぼれた。
胸元のレースが髪の毛で隠れてしまうので、結い上げて、顔回りがすっきりとする。
靴はいつも履くような疲れないものは一旦おやすみさせて、石畳の上をコツコツといい音を鳴らすかかとの高いものを選んだ。
全身を鏡で見直して、いつもと雰囲気の違う自分に笑顔を向けて、いってきます、と呟いた。
ただ街へ出掛けるだけだと言うのに、そんなにおしゃれにしていくものか、なんて言われてしまうかもしれないけれど、私はこの服を着て街を歩きたいのだ。
誰が何と言おうとも、お気に入りの服を着て、大好きな場所へと行きたいのだ。
1/28/2023, 2:51:11 PM