「今までありがとう。幸せになってね」
彼女は目にいっぱいの涙を浮かべながら小さくそう呟く。
甘えん坊で泣き虫な彼女。
いつもならすぐに抱きしめるのに、もうできない。
元彼女は、後ろを向き駅へと歩いていく。
どんどん小さくなる背中を見ることしかできなかった。
僕の海外赴任さえ無ければ、こうなることはなかったのに。
断れば良かったのかな。
後悔ばかりが押し寄せる。
でも元彼女もこの地でやりたいことがある。
僕も海外の地でやりたいことがあった。
僕も帰ろう。
帰って、引越の準備をしなくては。
でも、今日だけは許してほしい。
家に着いて、僕は一晩中泣き明かした。
「今日だけ許して」
10/4/2025, 11:30:18 PM