灰田

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「君の奏でる音楽」

窓の外に佇んで聴いてる、ピアノの音。
水の流れを思わせる…雨の響きを思わせるそれを、
恩寵のように大切に聴いている。

君の奏でる音楽は、私には痛くて…ひとりの時じゃないと聴けない。……泣いてしまうから。
こんなに心の奥深くに切り込んでくる音を、私も出せたらいいのに…。
悲しいし悔しいけれど、君の音楽を知らないで生きるよりはいい。

こんなに痛い幸せをもたらしてくれる神さまに、苦し紛れに感謝している。今日も密かに。

君の音楽を聴いてから私は、苦しみと優しさと、よろこびと悲しみを、ふたつに切り離せなくなった。

幸せに宿る悲しみ、悲しみに宿る幸せ。

複雑でシンプルな(だってふたつがひとつになるんなら、その分シンプルじゃない?そして混ざってしまうなら、やはり複雑。)悲しみに満ちて、まるきり恋をするように君の音を聴く。

窓の外、たったひとり、世界中の誰にも氣づかれない、日だまりの死角に……今日の日も私は、君の音楽を聴く。

8/12/2024, 10:30:32 AM