前略
何月ぶりのお手紙でしょう。久しぶりです。
もう、最後に会ってから二年が経ちますね。
でくの坊であった私にとって、あなたとの出会いは、
きせきのような、そんな出会いでした。あなたとの
なつかしい思い出が、私の支えです。
いつも、貴方を思っています。
私にとって、あなたはそんなかけがえのない人です。
もっとも、あなたはそれを知っていたのでしょう?
殺したのも、そのためでしょう?
しずかに、あなたは自分を殺した。
ていねいに、念入りに。
殺されたあなたがいたあの日を忘れられないのです。
さざんかの綺麗だった、あの日のことを。
なんとなく、疲れた顔をしたあなたに声をかけた。
いつものように、あなたは笑った。
のんきに、後で聞こうと思ったのです。
なぜ、後があると思ったのでしょう。
らんるほど、私の選択はお粗末なものでした。
罰当たりな私の楽観主義の向こうで、あなたはあなた
を追い込んで、壊れてしまったのです。私はあなたの
与していた病種も、
えるはずだったあなたの未来も、
てにすら触れられていなかった。隣にいながら。
私は、あの日から必死であなたについて調査を
はじめました。あまりに遅すぎますが。
あなたを助けることに傾倒していた私を、あなたは
なんとかして、解放したいと思っていたということ、
ただ、私と暮らすことを申し訳なく思っていたこと
を、私はその時に初めて知りました。
愛されることを、あなたはいつも拒んできたことも
しりました。
てを振り払いたくなる衝動を抱えてきたのがあなたで
いきて人に迷惑をかけずに生きていきたい信念を
まったく捨てることなく、ここまで生きてきた。
すさまじいあなたの生き様を、知りました。
だけど、それはあなたの自我の崩壊で幕を閉じました
かなしいことですが、人は一人では生きられません。
らんせの英雄でさえ、一人でことは成し遂げない。
あなたは、もっと迷惑をかけるべきなのです。
なにも恥ずべきことではないのです。
たにんを頼って生きることは、人の自然な生き方です
はずべきことではないですから、もっと、もっと、
自分を大切にして生きてください。
分不相応な頑張りは、自分を痛めつけるだけで、人
を苦しめるものなのです。こんな風に。
生をかけて、私は人を救いたいと思っていました。
きっと、人を救うのだと決意していました。けれど、
てはあなたに届きませんでした。
いつか、あなたを救える強さを持つまでは。私には
てを差し伸べる権利はありません。
さようならをいうために、私は筆を持ったのです。
よく勉強して、必ずあなたが頼れる人になってきます
うるさいくらい、あなたを救える人間になります。
なんねんかは、きっと会えません。ごめんなさい。
らいねんには、お手紙を書きます。
さようなら。
草々
追記
もし、あなたが、聞き苦しい隠れた手紙の叫びに気づ
いてくれたなら、これほど嬉しいことはありません。
私の決意と理性に隠された、私の叫びを見つけてくれ
たら。
きっと、それに気づけたということは、あなたが回復
に向かっている兆しでしょう。
そして、それは私が隠した気持ちにとっての、これ以
上ない供養でもあります。
そうであれば、本当に嬉しいです。
【隠された手紙】
2/2/2025, 2:38:18 PM