【イブの夜】
街の片隅の小さなケーキ屋で、売れ残っていたミルフィーユとモンブランを一つずつ購入して帰路につく。クリスマスイブの夜とはいえ、こういうクリスマスらしさの薄いケーキは予約なしでも買えはするらしい。ホールケーキを買うほどイベントごとに積極的な性質ではないから、この程度で十分だった。
「ただいま」
自宅に帰り暖房の効いたリビングへと入れば、先に帰っていたらしい君が「おかえり」と顔を綻ばせ、そうして僕の持つケーキボックスに目をとめた。
「あーっと、まあそうなるかぁ」
「え、なんかまずかった?」
首を傾げて尋ねれば、君は少しだけ罰が悪そうにキッチンへと足を向ける。冷蔵庫から取り出されたのは、僕の手の中にあるのと全く同じケーキボックス。
「お互い考えることは一緒だね」
少しだけ気恥ずかしそうに笑う君に、思わず僕も笑ってしまう。
「四つのケーキを二人で食べるなんて、イブの夜らしい贅沢で良いんじゃない?」
軽やかにそう告げて、愛しい君の身体を腕の中に抱きしめた。
12/25/2023, 12:10:33 AM