『マグカップ』
仕事終わりの休憩室に、片付け忘れられていたマグカップがあった。
近づき、意中の人のマグカップだと分かった。
つい先ほどの出来事を思い出した。
最近よく話すようになった、前より仲良くなれた気がする、とあの人が話していた。その人はあの人と同性ならまだしも、自分と同じ異性だ。仕事の上の関係とは言いつつ、距離が近い2人を見るたびに焦りが募る。
ちょうど良い。
意中の人のマグカップを手に取り、空中で手を離す。マグカップは重力に従って落下し、ガシャンと音を立てて破片となった。
これであの人に話しかける口実ができた。
緩む頬を押さえつつ破片を拾い、明日初めて話すあの人にどう話しかけようかと頭を悩ませた。
6/16/2025, 8:58:04 AM