粉末

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ふと目が覚めてその痛みに気付く。
(腰痛い…)
あお向けから横を向いて楽な姿勢をとった。うう…と体からの悲鳴が聞こえる。
せまいベッドの中で動いたからとなりのこの人を起こしてしまったかもしれない。
「…ごめん。」
反応なし。寝ているようで安心した。
それはよかったのだがまだ外は真っ暗。起きる時間ではない。
(どうしよう…寝れない。)
起き上がれば起こしてしまうかもしれない。
でも睡魔はどこかへ行ってしまった。
「ううぅ…。」
その無防備な左腕にしがみついて顔をうずめた。
いいにおい。洗剤と柔軟剤とこの人のにおいが混じり合って落ち着くにおいになっている。
顔も頭もほにゃほにゃに溶けていくのがわかった。
寝巻きのパーカーもやわらかくて肌触りばつぐん。
そのへんで買った割安品だが高級ルームウェアに負けていないだろう。
これに頬ずりすると声にならない声が出てしまう。
「へへ…。」
(かわいいな…。)
頑張った昼。夜のごほうび。
ふたりでつくるひとりの時間。



真夜中

5/18/2024, 6:18:03 AM