てふてふ蝶々

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早々と大学が決まった。
念願の志望校に合格決まった時は泣くほど嬉しかった。
新生活も楽しみ。
生まれて初めての一人暮らしも楽しみ。
都会へ行くのは不安半分楽しみ半分。

合格が決まるまでは明るい未来ばかりに目がいっていたけれど、決まって落ち着いたら色々なものと別れる事に気がついた。
両親。とは別れじゃないけど、もう朝起こされたり小さなお小言もいわれなくなる。
慣れ親しんだご近所さん。朝、いつも挨拶するおばあちゃんにも会わなくなる。
友達とも、今みたいに毎日会えるわけじゃない。
彼氏とは遠距離の予定だった。
よくよく考えてみると、会いたい時に会えないで縛りつけ合うだけの関係は、若者としていかがなものか?
縁が続いていつか結婚したとして、他の誰とも付き合わずに結婚したら後悔しないだろうか。
だから、最近別れようと切り出すタイミングを探している。
別に嫌いなわけじゃないし、好きが大きいから会うとなかなか言い出せない。
だからと言って、高校生活の大半を彼氏彼女として過ごしてきたのに、LINEや電話で別れるのも違う気がする。
彼からは、「離れても会いに行くから」とか言われちゃって、嬉しいやら切ないやらモヤモヤ。

人より早く決まった大学合格。
さよならを言う前に、たくさんの人とさよならする覚悟をしなければならないなぁ。



死のうと決めた。
今から死のう。
刃物や薬や死ぬ方法のイロハは調べ尽くした。
飛ぶ鳥跡を濁さず。
部屋を片付ける。
整理する。
やりだすと止まらない片付け。
いっそ、居なかった事にしたいと、手当たり次第にゴミ袋に突っ込んでいく。
部屋の隅にゴミ袋が積まれていく。
死ぬって決めて、どうでもいいはずなのに、資源ごみとキチンと分けたりしちゃう。
燃えるゴミ、燃えないゴミ…
家具の中は空っぽになった。
凄く汗をかいたからシャワーを浴びる。
シャンプーリンスを捨てたから、水浴びみたい。
汗臭い服で体を拭いて、燃えるゴミに突っ込んだ洗濯済みの服に着替える。
さぁ!死ぬぞって思った頃、朝日が登った。
今日は燃えないゴミの日で、今日を逃すと二週間は捨てられない。
燃えないゴミを捨ててから死のう。

ゴミ出しを終えていざ!
ちょっと待って。
親族とかが死んだ私の部屋に来るかもしれない。
メモをしよう。
死んだと報告してほしい人リストを作る。
そのためにゴミ袋から鉛筆やらメモやらを取り出す。
私は一体何をしているんだ。
メモをぐちゃぐちゃに丸めてまたゴミ袋に突っ込む。
さて、何もない部屋でどう死のう。
困った。
勢いで刃物は捨てた。
薬もゴミ袋の中。
紐…紐で首を!
山のようなゴミ袋から紐になりそうな物…
いや、面倒だ。
紐、コンビニで買おう。
一番上のゴミ袋に突っ込んだ財布を取り出して、外に出る。
最後の晩餐だ!とばかりに大好きなご飯屋さんでお昼ご飯を食べよう。

ご飯を食べていると、私、何してるんだろう?
と馬鹿馬鹿しくなった。
死のうと決めてから、全然死ぬ気になれてない。
さよならって言える人でもいたら違うのかも。
仕事を辞めてお金がなくなり、親にも頼れず友達もいない。
私が生きていようが、死のうが、誰も何も思わない。
せめて『さよなら』が言える人。
死ぬ前に『さよなら』って誰かに知らせたい。
自己顕示欲?
今、この世にさよならを言う前に、誰か私のさよならを聞いてくれませんか?

8/20/2023, 10:57:12 AM