貝殻
雲一つない快晴、夏休みも半ば、まさに海水浴日和。地元の海水浴場はどちらかといえば家族向け。県内外から人が集まるほどの有名どころではなく、あくまでも地元民の遊び場。だからか、自虐するワケではないが立てられたパラソルも敷かれたレジャーシートもおとなしめな気がする。
そんな中、前方に異質な光景を見つけ足を止める。
真っ白なでっかい貝殻。目に眩しいラメ入りのそれは貝殻モチーフの浮き輪。周りから浮きまくる派手な貝殻に寝そべる女性。どこの場違いなパリピだと顔を拝んでやろうと目をやり。
げ。
思わず回れ右をする。目立ちまくる好奇な視線に晒されているのは同級生、もとい待ち合わせの相手だった。
「アキラ、おっそーい!」
逃げることは間に合わず、他人のフリもさせてもらえず呼びつけられる。
「サクラ、何だよコレ」
「いいでしょう~。楽天スーパーセール」
いやソコじゃない。
「こんな田舎の海でこんな目立つモン持ってきやがって」
「いいじゃ~ん、ひと夏の思い出だよ」
楽しそうに笑うサクラの髪は休み前は黒だったのに今は明るい色に染められている。おそらく本当にひと夏のハメ外しで新学期にはまた見慣れた姿に戻るのだろう。
まぁ夏だしな。
ただ。
「これは、ひと夏の思い出にするなよ」
持参したサクラ色の貝殻を模したイヤリングを差し出す。
9/5/2024, 2:08:26 PM