彗皨

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「…、、!」
教室の窓から君が女子生徒と唇を重ねる姿を見た。

「せんせーおはよ!」
「おはようございま…ってスカート、短すぎないですか?」
「えー!大丈夫だってー笑それより先生早くあたしと付き合ってよー」
「まだそれを言うんですか…
僕は高嶺さんと付き合う気はありません。」
「えー!なんで!なんで!」
「なんでって、、法律違反ですよ。」
「んー…じゃあ、卒業したらいい?」
「まあ、そのときは考えます。けど、僕は高嶺さんの気持ちには答えれないと思いますよ」
「大丈夫!私強い女だから!」
「はあ……」

「ねえうるあ、まだ海瀬先生狙ってんの?」
「当たり前でしょ!翔君かっこいいんだよね。」
「え、あんた翔くん呼び?やばー笑」
「いいじゃんか、翔くんが許してくれたんだし!」
「いいけど程々にしなね。
あとから傷つくことなるよ」
「大丈夫だってー!翔くんはそんな傷つけるようなことしないから!」


「それでは本日の授業を終わります。号令ー。」
「きりーつ礼、さーなら」

「またねー!翔くん!」
「あ、高嶺さん。」
「え!なになにー!まさかまさか、告白ですかー!?」
「違いますよ。今日僕用事があって教室の掃除ができなくなってしまって、代わりに高嶺さんしてくれますか?」
「えー!あたしが?なんで!」
「高嶺さん、僕の言うことだったら聞いてくれるかなーって。」
「先生って意外とくずですよねー!ほんと!
まあしますけど。そういうとこもすきだし」
「ほんとですか?ありがとうございます。」
「まあいーよ!」
「じゃあ、僕は教室から出るのでお願いします。」
「はーい」

「あ、あと」
「んー?っ、」
「最近うるあ、よく頑張ってるね。ちゃんと見てるから。」
「っー…」
「あれ?笑もしかして慣れてないんですか?」
先生が私の顔を覗き込む。
「せ、先生…頭ポンポンと呼び捨てはだめだってー!!!」
「笑、ちょっといじわるしちゃいました。
掃除頑張ってください。」
「んもー!!」

10分後
「ふぅーだいぶ綺麗になったかな!」
「先生に頼まれたからって、ちょっと頑張りすぎたかなー笑
あ!せっかくだし窓も拭こっかな」
「よいしょっと…」
雑巾を窓においた瞬間、手が止まった。
「へっ…」
見たくないのに目が離せなかった。
「あれ……って、。」
翔くんいや、海瀬先生と女子生徒が下の階の空き教室に二人きりでいた。

いやな予感しかなかった。
目に焼きつけてしまう自分が嫌になった。
「…、、!」
手から雑巾が落ちたその瞬間、先生と女子生徒は

「キス……した…よね。。?」

信じたくなかった。
紳士で優しいあの先生が
生徒思いで約束を破ることのないあの先生が
女子生徒とキスをしたなんて。

「だめ…これ以上見たら…」
目が離せない。
分かってる。傷つくことなんて分かってた。
「でも…」
先生が女子生徒の胸に手を触れたこと
女子生徒とキスをしたあとに微笑んだこと
女子生徒と会うのを分かっていて私に掃除を頼んだこと
「用事じゃなかったの……、?先生…」
私が都合良く使われていたこと
全てが嘘であってほしかった。

ガラガラガラッ───
後ろから、戸が開いた音がした。

「高嶺さん。掃除、終わりましたか?」
「……。」
「…?あ、窓も拭いてくれたんですね。ありがとうございます」
「…」
「…高嶺さん?」

涙が溢れそうだった。
そのときだけは、泣かない自分を褒めたいほど辛かった。
「もしかして、どこか悪いんですか?
保健室連れて行きましょうか?」
さっきまで女子生徒と淫らな事をしていたのにも関わらず、普段通り喋りかけてくる先生が恐かった。
「…大丈夫、です。」
「…そうですか。掃除、ありがとうございます。
とても綺麗になって嬉しいです」
「、、あの」
「?なんですか?」
「、…いや、えっと…もう帰りますね。」
「あぁ、そうでしたか。
ごめんなさい、足を止めてしまって。」
「大丈夫です」
「それじゃあ『さようなら』」
「…さようなら。」

さよならを言う前に、
「また明日」そう言えたら良かった。

8/21/2023, 12:43:35 AM