好きな色
10代の頃、これは恋だ、と思っていたものが、大人になって振り返ってみると、そういうことでもなかったかも、と思い出すことがたまにある。恋に恋してる、というやつだったと。まあ恋ってそういうものだ、とも言えるかもしれないけど。とにかく、周りに構わず、前のめりにぶつかった。そういう時期が確かにあった。
青の絵の具と赤の絵の具。それぞれを点として隣同士に置く。それを距離をおいて遠くから眺める。すると、それぞれの点の輪郭線がぼやけて見えて、ぼやけた部分同士が混じり合い、紫の点に見える。点描法という描き方の基本理論だ。
近くでは純粋な青、純粋な赤。でも離れてみれば1つの紫に。
青が好きだ、赤が好きだと若者は声高に言うだろうが、大人には大して違いはない。結局どっちも別の同じ色に見えてくる。年を取るとそうなるのさ。
老眼って意味じゃないよ。心がって意味。何かを前にしても、情熱を持って前のめりに向き合う気力が薄れていく。そういうものか、と遠くから眺めて終わり。近づこうともしない。
ううむ、いかん。いかんな。
まだ杖をつく年じゃない。意識的に情熱を燃やそう。好きな色を探しに行こう。自分がこれが好きな色だ、と思ったならそれでいいんだ。全力でその色を抱きしめろ。離れた人間から何色に見えようが知ったことか。
6/21/2024, 12:18:19 PM