Leaf

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「寒い」

所々斑に色づいた道を滑らないように踏みしめるようにして歩く。吐く息は白く,吸い込んだ空気は冷たすぎて喉や鼻の痛覚を刺激する。

かじかむ指先を擦るようにして合わせててみるけれどあまり効果はなくて。仕方なしに,握ったり開いたりを繰り返しながら血が通うのを期待する。


「······そうだった」

鞄の中を探った手はされど目的のものを掴むことはなく,ただ底に当たる。

視界に入った温度計は氷点下を示し,意識したことで余計に凍えたからだは身震いを起こす。こんな日に限って手袋を忘れ,道歩いているはずの使い捨てカイロは見つからなかったことを思い出す。


「どうしたの?」

突然立ち止まった僕を待つように足を止め首を傾げた君に,首を降って返事をしてまた歩き出す。

まぁ,ないものはないから仕方がない。些か行儀が悪いがポケットにてを入れることで暖をとろうかと考えていると,ん と目の前になにかが突き出された。


「えーっと?」
「手袋。手突っ込むのは危ない」

流石に人様から奪うのは忍びないといつまでたっても受け取らない僕にしびれを切らしたのか,問答無用で押し付けられるそれ。


「申し訳ないから」
「いいの。こうするから」

そう言って僕の左手につけて,そして反対の手は絡めるようにして繋がれて,漸く言っている意味を理解した。


「暖かいでしょ」
「······そうだね。ありがとう」

たぶん純粋な親切心なんだろうけれど,深い意味などないのだろうけれど。手袋を忘れたことに思わず感謝しながら,いつもの道を君と並んで歩く。

思いがけず知った君の体温。その暖かさを僕は忘れない。



テーマ : «手袋»

12/27/2022, 3:45:15 PM