私の名前は宇野真帆。松実小学校5年3組の担任だ。
私がまほうの先生である事は前回説明した通りです。知らないと言う方は10月13日の投稿を是非読んでほしい。
さて、松実小学校には大きなのっぽの古時計がある。(あら、有名な童謡の歌詞のようだわ)歌詞に出てくるおじいさんの時計と同じく振り子時計で、この時計もやはり止まっている。
振り子時計を知らない現代っ子のために少し説明しましょう。(うん、実に先生らしくて良い)
振り子時計と言うのは、箱の中に大きな振り子があり、その振り子が左右に揺れる事で時計を動かす仕組みになっている。
松実小学校にある時計は高さが2メートルくらいある。文字盤は遠くからも見えるように1番上にある。その下に大きな振り子がついていて、縦長の箱にに収まってる。振り子の部分は前面がガラスで振り子の動きがよく見える。
この古時計、どれくらい古いかという明治時代にイギリスから渡ってきたものだそうだ。実際に作られたのは18世紀。
文字盤には真鍮と金で繊細な細工が施されている。振り子も金で作られている。
歴史的にも芸術的にも大変価値のあるものである。(と、私は思っている」ただ残念な事に、今の松実小学校の生徒にとっては完全に壁の一部でしかない。
最初に止まっていると話したが、実は壊れているわけではない。夜8時ぴったりになると「かちこちかちこち」と規則正しい音を響かせる。
この音を聴くと楽しくなる。魔法学校が始まる時間だからだ。
この時計をどのように動かすかと言うと時計を起こすのだ。
時計とは時間である。時間というのはひとつだけの流れではない。いくつもの時間軸があり、動いているものも止まっているものもある。魔術はその時間軸の間を自由に行き来する事ができる。
時計を起こす魔法は魔術学校の3年生の課題のひとつだ。
松実小学校でいうと逆上がりくらいの難しさだと思ってもらえるとちょうどいい。できるまでは難しいけれど、コツさえ掴めば簡単。いつでもできるようになる。
時計を目覚めさせる魔法は時間を操るための基本中の基本。だから、できるまではきっちりと教え込む。逆上がりと違って出来なくてもなんとかなるというものではない。ここが魔術学校の厳しいところではある。
「では3年生の皆さん、時間の授業を始めます。ひとりずつ時計を取りに来てください」
もちろん、最初からこの古い時計を使う訳ではない。授業で使うのは練習用の懐中時計だ。
———————————
お題:始まりはいつも
10/21/2024, 9:46:49 AM