九至 さら

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『紅茶の香り』



君からはいつも紅茶の匂いがしていた。

紅茶に詳しくない私は、それがなんの種類の紅茶なのかは分からなかったけど、君の隣を歩くとき微かに香るその匂いが私は好きだった。

初めて君の家に行った時、君のお母さんがクッキーと一緒に紅茶も運んできてくれた。

その時初めて、君からする香りがダージリンティーの匂いだったことを知った。

砂糖の量にもこだわりがあるらしく、角砂糖2つが1番美味しいらしい。

私には少し甘すぎたけど、君があまりにも美味しそうに飲むから、つられて飲みきってしまった。

良かったら貰って、と差し出されたものは、今飲んだ紅茶のティーパックで、

僕のお気に入りだから、と少し照れながら君は言った。

家に帰ってから砂糖を入れず、ストレートで飲んでみた。

やっぱりこっちの方が美味しい気がしたけど、
君と同じものが飲みたくて、角砂糖を2つ入れた。




未だに紅茶の種類はダージリンティーしか知らない。

私は今日も、ダージリンティーを2杯注ぐ。

君のせいで、朝食がご飯派からパン派になってしまった。トーストの焼き加減にも慣れたものだ。

1度だけ、The和食という朝食にしてみたことがあった。

たまにならいいね。たまになら、と君があまりにも
〝たまにならね〟と強調するから、私は思わず笑ってしまった。


そうね、たまにならと言いはしたものの、君にお願いでもされない限り、もう和食を出すつもりは無い。

あ、君と喧嘩したときにでも、出してみようかしら。

なんて悪巧みしてみる。


そろそろ私からも紅茶の匂いがするだろうか。



10/27/2024, 1:10:45 PM