たった1つの希望
絶望を通り越して俺の心は動かなくなった。
虚無。
ただ何も感じない。
硝煙と血の匂い、瓦礫まみれでまともに歩く場所すら無い道、まるで物のようにそこらじゅうに転がる息絶えた人。
俺はただフラフラ彷徨っていた。
もう自分が生きた人間なのか、死んで亡霊になったのか、よくわからない。
「……ギャア、オギャア!オギャア!」
瓦礫の山の中から微かに声が聞こえた。
中には赤ん坊が。まだ生きてる。
その瞬間、俺は息を吹き返したようにハッとして瓦礫の山を必死にどかして赤ん坊を救出した。
「オギャア!オギャア!」
「あ、……生きてる。生きてる!よかった…。」
近くに倒れていたのは親だろうか、瓦礫に潰されてもう息はしていなかった。
腕に抱いた赤ん坊の暖かさは自分が、そしてこの子が生きていることを実感させた。
いつ死んでもいいと思っていたけど、この子の命を守りたいと思った。
生きたいと思った。
虚無だった俺の心に、小さなたった1つの希望が芽生えた。
3/2/2026, 11:23:35 AM