透明な羽根
空を飛んでみたくなった。
これはきっと人生で最後に見る空だ。
前日まで曇天だったのに、今日に限ってなんて綺麗な青空なんだろう。
すると目の前に小さな女の子が突然現れた。
おかしい、そんなはずない。
だって目の前はビルの谷間。建物は何にもない。
何かで浮いているようだった。
「だめだよ。ヒトは羽根がないと飛べないんだよ?」
大きな瞳をぱちぱち瞬いて不思議そうに言う。
「……て、天使?」
思わずそう言った瞬間、意識がプツリと切れた。
目を覚ますと、元いたビルの屋上の真ん中に寝ていた。
夢だったのかと体を起こすと、手に何か握っていた。
目を凝らして見ると、一枚の透明な羽根だった。
11/8/2025, 11:25:52 AM