川柳えむ

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 部屋を片付けていたところ、引き出しの奥に眠っていた宝箱を見つけたので開けてみた。
 そこには、思い出と共にしまっておいた物達がきらきらと輝いていた。

 ラムネの瓶から取り出したビー玉。
 河原で拾ったまあるい石。
 おもちゃの指輪。
 好きなキャラクターの缶バッジ。
 小さなぬいぐるみのついたキーホルダー。
 あの日海で拾った大きな巻き貝……。

 懐かしい、たくさんの宝物がそこには詰まっていて、思い出と共に一つそれを取り出した。
 あの日はよく晴れていて、大はしゃぎで浜辺を駆け回った。砂浜に埋もれた大きな巻き貝を見つけて、目を輝かせて両親に見せたっけ。
「貝殻を耳に当てると波の音が聞こえるんだよ」と父が教えてくれた。
 その場で試してみたけれど、すぐ近くの波の音が騒がしくてよくわからなくて、でもその巻き貝がとても綺麗に見えて、両手で包んで大切に持って帰った。
 そしてそのまま宝箱にそっと入れて、引き出しの奥に大切に大切に閉まったのだ。

 巻き貝を耳に当ててみる。あの日の、潮騒が聞こえてきた。
 幼い頃の自分と両親の姿が、瞼の裏に甦る。あの頃から随分と長い時が経った。大切な思い出がたくさんの宝物になった。

 ありがとう、ここまで育ててくれて。私はもうすぐこの家を出るけれど、いつまでも二人の娘です。


『貝殻』

9/5/2023, 4:13:50 PM