──ひどく穏やかな夜だった。月のない真っ暗な夜。探せど探せど道は無く、ただ、暗闇だけが満ちている。見上げた空には数多の星が溢れているというのに、その輝きは地上まで堕ちてこない。高潔で、高慢で、何よりも壊れやすい彼方の星に。もし自分の手が届くのならばどうしようか。つかんで握りしめたまま大事に隠してしまおうか。
3/15/2024, 1:31:40 PM