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 街はイルミネーションできらびやかに飾り付けられている。キラキラと輝いて宝石箱の中に迷い込んだようで、昼間より明るく映るのは私の気分も関係しているのかもしれない。
 ケーキの箱を抱え、すれ違う家族連れやカップルをにこやかに見送る。私は1人で歩いているけど街行く人の幸せそうな顔を見ていると私にも移って心地のよい幸せな気分になった。広場に設置された大きなクリスマスツリーは遠目からでも立派なものだったが近くで見るとまた迫力が違う。天使にリース、ヤドリギが吊るされて天辺のお星様がギリギリ見えるか見えないか、首が痛くなった。

 彼の仕事は口では言えないものもあるけど家族を大切に想っている。弟の夢を壊さぬように一生懸命に夢を守っていた。
「ふふん」
 いい子のもとにはサンタさんがやって来るものだ。私が彼のサンタになって時間が少しあるなら一緒にケーキを食べて「メリークリスマス」ととびきりの笑顔でプレゼントを渡して、お取り込み中ならばちゃちゃっとケーキとプレゼントを渡して宿に帰れるように荷物は最小限にまとめてある。
 あまり会えない彼を訪ねてしまおうという私からのサプライズ。イブの夜に一目会いたい私のわがままでもあった。

 彼の職場に近づくほど靴音が軽やかになっていく。小さな子どもが口ずさむクリスマスソングが私の心を盛り上げてくれる。

 彼に、会えるかな。あの青い綺麗な瞳を見開いて驚いてくれるだろうか。
 一目会えればそれでいい。それが私へのクリスマスプレゼントになるから。

12/24/2023, 11:39:21 AM