ずっと隣で
自分は死にたがりだった。
とにかく何もなくても死ぬことばかり考えていた。
長生きしないで死ぬと思っていたし、事故で死ぬ、病気で死ぬ、自殺で死ぬとばかり思って生きてきた。
高校生でうつ病らしき症状をあらわし始めてから、死にたがるのは最良のストレス解消法になっていた。安易に破壊的な想像力を働かせることができるので、お手軽で、0秒で、現実を破壊したような気分になれてとても良かった。
いまも、ややもすると死にたくなる。
けれど、万葉集にあるような、「自分の命は惜しくはないが、あなたのために長い命がほしいのです」という気持ちに変わった。
自殺未遂を起こしたとき。
兄は救急車を呼び、妹はむせび泣いた。
そうして、意識を取り戻したあと、ふたりは生還を温かく喜んでくれた。
ああ、自分はなんということをしたのかと…そう思った。
こんなにも自分の命を尊んでくれる人がいる。自分が死に面した時、こんなにも感情を波立たせてくれる人がいる。
どうして、自分には愛してくれる人などいないなどと思っていたのか。
あまりにも周りが見えない、そんな自分の身勝手な思い込みに、またふたりの悲しみと喜びに打たれた。
深い愛を体現した存在が、こんなにも近くにいたではないか。
生きるということ。
それは過去に足を引っ張られ、絶望に溺れそうになること。
愛するということ。
それらすべてを包み込んで許し、解放された温かさを手にするということ。
これからも生きようと思う。
愛する人が、ずっと隣りにいてくれる限り。
3/14/2023, 6:52:52 AM