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雲一つない空はどこまでも澄み、
群青色が鮮やかに広がっている。

雪原に男が一人。
国防色の軍帽に少佐肩章付きの外套を纏い
煙草を喫んでいる。

男の目の下には、生来のものか、或いは、軍人としての激務故か、深い隈がある。

感情の読めない黒い眼差しは、
真っ直ぐ空へ昇っていく煙草の煙へ注がれていた。

風一つない今日は煙が空高く昇っていく。
何物にも邪魔されず、
在るが儘に、その存在を許されているかの様に。

─嗚呼。胸がすくような冬晴れだ。

男は口元を僅かに綻ばせると、
それを隠すかのように煙草を燻らせた。


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「煙と蜜」より土屋文治



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読み返したら思わず吹き出す誤字を発見。

「いや、これも有りなんだけど…」

暫し悩んで、正しい文字に訂正。

この文字を使いたかったら、「男」より
「青年」とすべきなので今回はコチラで。

誤字失礼しました。

1/5/2024, 1:03:34 PM